第1幕

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 旦那は面白みに欠ける。振っても乗ってこない どころか、完全にスルーされる。 「合わない」  そんな気持ちが年々、強くなるばかり。  浮気の条件は整っていた。というか、最近、離 婚を月に一回以上は考える。  夫婦関係を、家庭を一緒に楽しく作り上げてく れる人に出会いたい。 「恋をしたい」  恋をしたい。恋をしたい。  恋をして、結婚したい。 「恋をしたら、悪いのか」  酔いも醒め、お笑い商店街から戻ってきて、そ れなりのマンションを見上げる。  本当の母子家庭になって、安い時給のパートで くたくたになり、食べるのもケチり、貧乏するの は嫌だった。  新車に乗り換えたい。 「浮気じゃなく、本気の恋」  と自分に言い聞かす。  高校時代、いじられキャラの子がいじられ過ぎ て、いじめに発展し、自殺。  お笑い番組も良し悪しだった。  人を募集してると教えられ、同じ集合住宅の橋 本さんのパート先で、来週から、わたしも働くこ とになっていた。  旦那は大抵、午前様。泊まりの出張も多かった。 「母子家庭と変わらない」  次の夜も、ももとふじがが寝静まった頃、夜の 散歩に出る。  息を吸い込み、思いっきり、お笑い商店街を空 想する。 「みんな、青春時代があったんだ」  と思わされる。  わたしにもあったのに――。       詩1  能力の差じゃない。  向き不向きの話でもない。  するか、しないか。  一派踏み出すか否か。  恋愛や起業、  なんてレベルじゃなく、  風呂掃除、  自転車のパンク修理、  レベルの話。  僕はびびってる。        2  僕は落とし穴に落ちたように、  ケチになっていく。  風呂の水が捨てれない。 「もう一回は使える」        3  テレビを見る。  コインランドリーで、  まったくの他人に依頼、 「一緒に洗濯してもらえませんか?」  中年男性はめげずに、  五人目で許可を得る。  乾燥も含めて一回、約千円浮く。  新薬を飲んだり、  色んな治験を受けては稼いでいる。  僕は洗わなきゃいいのにと思う。 「着なきゃいいのに」        4  風呂の後の水で、  食器を洗ってる女性。  それも彼氏が泊まりに来た時まで、  いつもの癖で――。  上には上がいると、  僕は脱帽。  テレビの電気代が気になってくる。 「豪気に点けすぎだ」        5 「自分がケチだなぁ」
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