第1幕

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 とりあえず、アイデアの貯金箱に入れておこう。 「ちゃりーん」  僕の壮大な計画を原田にだけは話してる。  実行の伴わない理屈屋、原田が今回ばかりは頼 りになる。 「結婚相手を性格や相性、容姿、お金持ちかどう か、面白いか誠実か、優しいか男らしいか、など 色んな基準で選ぶように、子供を選んだっていい じゃないか」  原田は部屋を歩き回りながら、 「子供を大切にしたいからこそ、独身女性はシン グルマザーであるべきだ。  旦那と離婚してもいいけど、本来、結婚せずに 子供をどんどん作るべきだ。  究極、子供同士が仲良くなって、親が結婚すれ ばいい。今まで、子供はそういう扱いに甘んじて きた。  本当の主役は子供だ。連れ子を大切にしてくれ る人、なんて希望レベルでは不十分」 「す、すごい」  情報通の頭でっかち、ろくでなしで人でなしの 知人、原田は大親友レベルを飛び越え、神様の領 域に近付いていた。 「知ってるか?」 「何を?」 「どうしようかなぁ」  横目で僕を見る。もったいぶる神様だった。 「師匠」  僕の呼びかけに、ニッとする原田。 「多夫多妻がアメリカで、静かなブーム。で、結 構、上手く行ってるんだ」  見てきたように話す神様だった。 「奥さんに旦那が何人もいる。そして、旦那にも 奥さんが何人もいるって寸法」  僕は頭の中で男女マークや矢印を使って、即行、 図示する。うんうん、超理解。 「セックスは?」 「そっちかい、金太郎の興味は?」 「と、とりあえず」 「し放題さ」 「おーッ」  僕は爆発して、木っ端微塵。  原田の手がホウキで掃いては、ちりとりで僕を 拾い集める。 「生涯に渡って、独身男子や独身女子は増えるば かり。そんな中、金太郎は新しい家族像を作ろう としてる」 「いや、そんな大層なことじゃないんだけど」  僕は平身低頭。 「もっと自覚を持て」 「そ、そう?」  なんか、原田の魂胆に乗せられてる気もしない でもない。  実験台にされてる気がしないでもない。 「一人ユニセフ、一人プランジャパン」 「大げさー」  そう言いながらも、原田におだてられたら、僕 は木にだって登ってしまう。 「小さい子供を連れたお母さんほど、魅力的な女 性はいない。  若々しい女子高生やどんな美人だって、足元に も及ばない」  プログラミングされたホログラムの原田が元々 は言い出しっぺ。  今一、いけすかないけど、僕に欠けてる分を補 ってくれる。
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