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昼に近付く陽の下、アスティスの金の髪がキラキラと輝く。
とろけるような笑顔に一瞬でも気を許してしまいそうになるも。
ティルアはぶんぶんと頭を左右に振った。
「アスティス様、絶対遊び人ですよね!
誰にでもそういうことを言っていらっしゃるのでしょう?
私は騙されません。絶対騙されません」
「だ、騙す?」
「ええ。貧民街のあの店で、店員が私に言ったのです。
“ 騙されやすい女だな ”――って。
確かにそう、私は騙されやすいのかもしれません。
今なら許してあげますよ?
婚約する気なんか元からなかった。
ただ、騙しやすい女で遊びたかっただけなんだ――ってね」
ふふ、とおどけるようにティルアが笑い、アスティスの反応を冗談半分で窺った時だった。
紙袋が地面に落ちた。
アスティスの手が強引にティルアの腕を掴んだ。
「きゃっ――痛っ」
突然のことにティルアは目を見開く。
彼の手がぎちりと手首をきつく握り、強引にティルアを引っ張っていく。
「アスティス様、袋が、ドレスが」
「…………」
「アスティス様、離してください、どこへ、どこへ連れていくおつもりですか」
歩調がでたらめな速度に変わる。
ティルアがいくら足をもつれさせて転びそうになっても、関係なかった。
「あ、アスティス様……」
家同士の隙間に入る。そこで初めて彼がティルアの方へと振り返った。
「――――!」
怒っているとすぐにも理解できた。
睨まれるだけで、ティルアの背筋が凍り付く。
「君は……言ってはいけないことを言った」
ゆらりと伸びてくる腕。
壁際へと押し付けられる身体。
「んっ、―――」
塞がれた唇を伝って侵入する熱。
アスティスの片手が逃げようとするティルアの両手を頭の上で捕縛する。
もう一方の手が壁際のティルアの脚を押し上げる。
「んんっ、んー、んーーっ!」
抗議する声も掻き消され、上げられた脚は彼の肩へと乗せられる。
何をされるかすぐに理解できた。
「ひゃ、やっ、ん、んんーー!」
恐怖に身体が震える。
走り抜けたものは、快感ではなかった。
「ん、痛……あ、や……ぁ」
愛に濡れることのない蕾が無理矢理花びらを抉じ開けられる。
走る激痛に身を捩るものの、腕はびくともしない。
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