第2話

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病院の外来待合を抜け、正面玄関の自動ドアが開くと、そこにはグレーのストライプにスーツを着た浅井さんが立っていた。 「お待たせしてすいません」 「いえ……」 こっちを振り向いた浅井さんは一瞬固まっている気がすると思ったら不意に目をそらされてしまった。 もしかして好みじゃなかったのかと不安になった。 「女性は服装でイメージが変わるものですね、良くお似合いです」 「あ、ありがとうございます」 思わぬ褒め言葉と、優しい視線に思わず本気で照れてしまった。 「今日はお仕事だったんですか?」 「はい、と言っても顔を出した程度で、本格的な出社は明後日からです」 「そうなんですか」 「はい、まだまだ新居の片付けも終わってませんし」 「そっか、それもあるんですよね。大変。新居は近くに?」 「えぇ、二駅程離れたところです」 「近い方がいいですもんね」 他愛無い会話。 でも数ヶ月ぶりに見る浅井さんは相変わらず落ち着いた雰囲気でかっこ良かった。
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