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私達は彼の提案でとある場所に向かっていた、勿論着替えやら歯磨きは済ませてある。
歯磨きは甘く見るな?その内肉や神経まで食われるからな。
「やー、楽しみだわ。デートって久しぶりじゃん?」
「デートか、端から見ればどうなんだろうな」
運転をしながらなので前を向いたままではあるが、彼がやけに声を弾ませながらそんな事を言う。
良い歳した中年男性二人だ、運動不足を解消しに来た友人同士にしか見られないだろう。もっとも、それは都合が良いのだがな。
「良いんだよ、俺らがデートって思ってればさ」
「……そうだな、そういう事にしておくか」
「素直じゃないなぁ」
お前が素直過ぎるんだ、と言いたいが。それが彼の良い所で、尊敬出来る所でもある。
いつまでも真っ直ぐで自由な彼が、私は堪らなく愛しいのだとつい口元が緩んだ。
「しかしスカッシュか、どんなものなんだろうな」
「俺もこの前テレビで見ただけだから分かんね。でもまぁ、結構ハードそうだったわ」
「……ハードなのか」
自慢ではないが、私は昔から運動が得意ではない。スカッシュもどういったものかは大体分かるのだが、果たして私に出来るのだろうか。
「大丈夫、いざとなりゃ他の事すりゃ良いしっ!」
「……そうだな」
どうやら顔に出てたらしい、気を遣わせてしまったな。しかしながら運転をしているのに、よくもまぁ私の表情まで気が回るものだ。
いや、気に掛けてくれているんだろうな。
今日、某複合アミューズメント施設に向かう事にしたのも。最近中々運動が出来ていない私を気遣っての事だろう。
自分の周りの事はややガサツな癖に、私の事は色々と気付いてくれる。愛されてる証拠なのだろうな。
つい嬉しくなり笑っていたら、彼もそれに気付いたのかにんまりとした表情をしていた。
道中の車内では、よく晴れたから洗濯物は安心だとか、運動びよりだとか、そんな他愛もない話でポツポツと間を繋ぎながら。
私は休みが重なった偶然に改めて感謝していた、何気に久しぶりだからな。
こういう時間は貴重だ、だから今日は目一杯楽しませてもらうとしよう。
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