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10月8日。
私にとっては,1年の中でも特別な日。
「あ,るり。おはよう」
リビングに行くと,お母さんがちょうど朝ご飯を食べているところだった。
「おはよう」
「ねえるり,今日夜ご飯何食べたい?」
「え?何だろ…」
朝のぼーっとした状態でそんなこと聞かれてもなと思いつつ,私はなんとか頭を回転させた。食べたいもの食べたいもの…。
「って,もしかして今日お母さんが夜ご飯作ってくれるの?」
「何よ?悪い?」
お母さんは顔をしかめてそう言う。
「ううん。全然。楽しみ」
普段仕事から帰ってくるのが遅いし,お母さんがご飯を作ってくれることはほとんどない。いつも,おばあちゃんと担当だ。
「それで,何が食べたいの?」
「えー,お母さんが作ってくれるなら私は何でもいいよ」
「それじゃあ困るから聞いてるんでしょ?」
お母さんはため息をついてそう言った。
「じゃあお母さんが食べたいもので」
「は?」
「いいでしょ?」
「いや,でもるりの誕生日なんだから」
「お母さんが食べたいものを,私は食べたい。文句ないでしょ?」
「…まあ,るりがそう言うんだったら」
お母さんは降参したようにそう言った。
10月8日。今日は私の誕生日。
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