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ヘッドショットしてはないが、一撃で車のエンジンを破壊する(やや誇張らしいが)力が生み出すインパクトダメージは凄まじく、その二つの弾が着弾した周囲を根こそぎ抉り取る。 強引に三人を倒したスパーダは、間髪入れずに襲いかかってくる銃弾を、壁を蹴って三角飛びの要領で回避。 空中で弾が飛んできた方向に向けて何発か威嚇射撃をして、前転で受け身を取って着地する。 そしてそのまま膝立ちの状態で、十数メートル先の建物の壁が倒れてできている『盾』に向けて右のデザートイーグルで三発。 『盾』を易々と貫いた50AE弾が、その後ろに隠れていた二人に命中。 生死は不明。 それを確認するかのようにそちらに駆け出した所で、タンタンタン!!と乾いた音と共に、アサルトライフルの弾がいくつかスパーダの肩に着弾した。 「チッ!!」 忌々しげに舌打ちして、そちらに向けてまた右のデザートイーグルで一撃。 銃を構えていたそのプレイヤーの腕が、ほぼ根本から爆散した。 「うわぁあっ!?」 狙いをそのプレイヤーに変更した彼はそちらに駆け出し、七発撃ち尽くして弾切れになった右のデザートイーグルをホルスターにしまいつつ、開いた右手で背中から重量感のあるゴツいナイフを抜く。 慌てるそのプレイヤーの頭にそのナイフを叩き込み、一撃で仕留めた。 続いてさっきの『盾』の後ろの二人。 一人は『死亡』していたがもう一人は片脚を無くしただけだったので、スパーダはやはりナイフで止めを刺した。 その直後に上から降ってきた弾道予測ラインは、バク転のように回避する。 「――――――っっ!!!」 シノンは息を飲んでその光景を見ていた。 もはや言葉もない。 ハンドガンにナイフ、それだけで多対一の状況を駆け抜けていくその姿に、かつて同じようにハンドガンとナイフだけでBoBを征したかのプレイヤー、<<サトライザー>>を連想した。 「出来の悪いアクション映画みたい……」 スパーダがジャケットの内側に手を入れて黒い球体を取り出し、それを廃墟の三階の窓から狙ってくるプレイヤー三人に向けて思いきりぶん投げる。 迫ってくるその球体を見たプレイヤー達はぎょっとして、慌てて逃げに入る。 が、遅い。 黒い球体はその窓から入り込み―――その部屋の中で、青白い大爆発が巻き起こった。 プラズマグレネード。 思わず耳を塞ぎつつ、シノンはそれと理解した。 「い、いろいろ持ってるなあ……」 その後もスパーダは止まらない。
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