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「そうかそうか。俺の愛馬の良さがわかるか」
「なあちょっとだけ乗っていいか?いや、跨がるだけでも!」
「おーいーぞ。跨がれ跨がれ」
スパーダがそう言った瞬間、キリトはすぐにハーレーに飛びついた。
そのシートに跨がり、そのハンドルを握る。瞳をキラキラさせながら、スタンドを立てたままのハーレーに乗っている。
(これは……アスナに報告するべきかなあ………?)
「シノンさんもどうだ?」
「私はいい」
そうか、とスパーダはキリトが跨がるハーレーを見る。
はしゃぐキリトのその後ろで、彼はその車体をそっと撫でた。
(………………、あれ?)
その時、シノンはふと気付いた。
車体を撫でるスパーダの目が、そっと細められている。
エスニックなマフラーに顔の下半分を覆われて詳しい表情はよくわからないけれど………何だろう。
その下に、優しい笑みでも浮かべていそうな―――
「どうしたシノンさん。俺の顔に熱っぽい視線を注いだりして」
「うるさい違う!」
感情的になってしまった。
さっき思ったなにがしかが、特濃のソースに塗り潰された。
「ところでシノンさん。キリト旧型のバイクを運転できるのか?」
「?うん、まぁ……って、何で私に聞くの」
「だってこいつ今精神年齢が十年ほど巻き戻っちゃってるもん。邪魔すんのなんか悪くて」
「あー……」
無邪気な顔でスタンドで停止したままのハーレーに跨がるキリトを見て納得した。
何がキリトにここまでさせるんだろう。
そんなシノンの問いに、男子はみんなメカニックな物が好きなんだよ、とスパーダが答えた。
何だそりゃ、と思いはしたが、実際にキリトがプログラミングなどのコンピューター技術を得意としている事を踏まえると、妙に説得力のある話だった。
「でも確かにキリトはそのタイプのを運転できるけど、それがどうしたの?」
「いやほら、バギーをレンタルしてる所あるだろ?ツーリングしねーか、ってお誘いだ」
「ああ、なるほど」
バイクとバギーでツーリングと呼べるのかどうかはよくわからないが、まあ言わんとすることはわかる。
「あれ、何の話だ?」
「バギー借りてツーリングしようぜって話」
「いいじゃん。やろうぜそれ」
「賛成数一。シノンさんは?」
「私もいいよ」
「よっしゃ決まり!!」
スパーダの手拍子で、三人はレンタバギーの元へと向かう。
スパーダは当然ハーレー。
運転できるキリトはバギー。
では問題。
シノンはどちらと一緒に乗るべきか?
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