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「シノンさん、俺と二ケツしようや。一緒に風になろーぜなあなあ」 「…………………」 スパーダの押しが強くて、逆にそうする気が無くなってきている。 北風と太陽の寓話を知らないのか。 ……いやこの男の場合、それを知った上でこうして私をイジっている可能性も高い。 「スパーダ。俺がそのハーレーに乗るって選択肢は?」 「お前の運転免許何型まで?」 「………ち、中型」 「ならやめとけ。大型の扱いはそれとは全く別物だ」 「あとそろそろその少年の心引っ込めたら?アスナに報告しちゃうよ」 「や、やめてくれ。それは恥ずかしい」 慌てて両手を振るキリトを見て、少し噴き出すシノン。 いやさっきのお前も大概だったぞ、とスパーダもツッコんだ。 さて、実際どちらに乗るかだが。 バギーにはもちろん助手席があるため、普通に考えればこっちだ。 しかし、シノンはスパーダの後ろに乗せてもらうと決めていた(押しが強くて揺らいではいるが)。 ある程度接近しておいた方が、今後の情報が集めやすくなると思ったからだ。 いざ戦いになったら、逃げ場を全て封じて、完璧な一発をブチ込んでやるために。 まあ、競争にはあまり興味がないと言ったこの男をどうやって戦場に引き出すかが問題ではあるが。 (見てなさい。その余裕な態度、じきに喰らってあげるから) そう思い、シノンはスパーダの方を見る。 「じゃあ、そこまで言うなら乗せてもらおうかな」 そう言ってスパーダのハーレーに近付き、彼の後ろに乗り込もうとした時だった。 「ヒャッハーこれでこのゲーム内に俺とシノンさんの噂が立つぜぇ!!(キタ!!夢の『後ろからギュッ』がキタァァアア!!)」 「…………………………」 心の声まで口に出ていた。 本音も建前もろくでもなかった。 シノンは軽蔑の眼差しを一発スパーダにくれてやると、方向転換してキリトのバギーの助手席に乗り込む。 「よろしく」 「お、おぉ…………」 一部始終を見ていたキリトが、つっかえながら返事をする。 すると。 (………あ) スパーダが、また身体を揺らしてからからと笑っていた。 これは……私の魂胆を見切られた? それとも、ただからかっただけ? 判断を下しかねるシノンに、またスパーダが言った。 「じゃあシノンさん。次に会ったら、フィールドででも一緒に乗ろうぜ」 もう無理。 思考を引っ掻き回されて、判断の収拾がつかなくなってしまった。 何なのか、彼は。 本当に、 「(本当に…………食えない)」
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