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………うーん。 どうしようかなあ。 楽しそうではあるんだけど。 「さっき噂が何とか後ろからどうとか言ってたしなあ……」 「い、いやいやあれはジョークだぜ?さすがにあれは素じゃないぜ?わかってくれるよな、シノンさんはウィットに富んだ人だと俺は信じてる」 言葉を噛んだあたりそれは本当らしい。 そして自分としても、彼の誘いに乗るのはやぶさかではなかった。 二回連続で別の乗り物は少し疲れるけど楽しそうだし、キリト程ではないにせよ乗ってみたいという気持ちは少しあるのだ。 ―――それに、自分にとってこの展開は実に都合が良い。 ………まぁ、さっきのカーチェイスでぞろぞろと集まってきた野次馬から逃げたいというのも大きいのだが。 しかもその中心は自分とライダーの二人だけ。 このままでは彼の台詞『俺とシノンさんの噂が云々』が実現してしまう。 「うん、それ乗った。じゃあよろしく」 「オッケ。乗れ乗れ」 そう言いながらぽんぽんと自分のももを叩いたスパーダを華麗にスルーしつつ、シノンはシートの後ろに飛び乗った。 そして色々と身体を動かし、自分の姿勢をあれこれ試してみる。 「何やってんの?座りでも悪いのか」 「いや、後ろからぎゅってしなくてすむ座り方を探してるの」 「あんたの進路希望は中国雑技団か……?」 終いにヤジロベーみたいなポーズを取ったシノンは、冗談だよ、と軽く笑ってスパーダの腰に手を回す。 「んじゃ、行きますか」 ハーレーのエンジンがかかり、野次馬の波をかき分けながら鉄の馬が走り始めた。 やがてそれが速度に乗り、何人にも追い付けない領域に入る。 「………ん、あれ?ねえスパーダ」 「んー?」 「さっきのレース、分析のために最初は全力じゃなかったって言ってたよね」 「ああ」 「でもマシンの性能的に最初から全力でとばしてれば、あんた普通に勝ってたよね?」 「………んっ、んー」 あ、これは? 「忘れてたの?ちょっとカッコつけようとしてたの?カッコいいですなあ」 「…………だー」 あ、やった。これ勝った。 シノンはしてやったりとにんまり笑う。 さっきまでイジられた分の仕返しだ。 つっついてやる。 と、思っていたのだが。 「そうだよ。カッコつけたよ」 「え?」 「どっちにも乗った事あるし、性能の差は知ってんよ。でもだからって普通に勝つのも退屈じゃん」 「……うん」 「カッコいい、か。嬉しいね、俺はちゃんと良いところを見せられたらしい」
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