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そしてしれっと返されたスパーダの答えは、シノンを驚愕させるには充分だった。 「え?売ったよ、あんなモン」 「売っ…………!?」 思わず言葉につまる。 売った?アレを? リアルマネー取引で五万円の値がついたヴェクターを、二挺とも? いや、特にその銃に対する思い入れがある訳ではないんだけど…… 「………肌に、合わなかったの?」 「そんなトコ。何か高性能らしいから使ってみたけど、ありゃダメだな。威力はそこそこだが……狙った所にズドンといかねえ」 いやそりゃあサブマシンガンのヴェクターは面制圧で、狙ってズドンの武器じゃないし…… そもそも『サイドアームとして』高性能なヴェクターをメインで使うのが…… 色々と言いたい事はあるが、色々とあるのでうまく口から出てこない。 「んで、結局基本に立ち返るんだよな………ん?何でシノンさん俺がヴェクター使ってんの知ってんの?」 「あの時見てたから。変な意味はないよ。天地がひっくり返っても」 「予防線張んなよぅ」 あーそっかあの時かー、と納得するスパーダだが、シノンとしてはそれどころではない。 どうも彼は装備を割とコロコロ変えるタイプのプレイヤーらしい。 (他の装備も変わってる可能性がある) 調べなければならない。 ホルスターに収まって種類はよくわからないが、まず二挺のヴェクターがハンドガンに。 その他の装備は、彼はジャケットの下に隠していた。 (………バレないように) 彼に抱きついた姿勢を利用し、シノンは上半身から伝わる感触で彼の装備を推測していく。 (まずあのハンドガンと、背中にクロスさせてるっぽいのは……あのナイフ?かな) ふとシノンは考える。 GGOにおいて武器の装備は、メインとサブの二種類だ。 例外的にオブジェクト化すればスパーダのように二つ以上装備できるが、やる者はほぼいない。 銃弾にあてる装備限界重量が減ってしまうし、何より……複数の武器を装備するには、それぞれの武器を使いこなすだけの技量がいるからだ。 (ハンドガンとナイフ二個ずつならまだ問題ないのかな?いやまだ何か装備してるかも……服でわかりにくいな……) 頼りない感触を元に頑張るシノンだが。 「あー、ヤバい」 唐突にスパーダがそう言った。 「あーヤバい。これはヤバい。ヤバいよヤバいよー」 「え、ど、どうしたの?」 まさか、装備を探ろうとしてたのがバレてしまったのだろうか――― 「超おっぱい当たってる」
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