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「………何でこの子の名前知ってるの?」
「銃身にそう書いてあった。『へかーと』って」
「え、ひらがなで………?」
ひらがなじゃなかった。
よかった。
しかし思わぬ形で彼を調べる手段を失ったシノンは、さてどうしようと考える。
考えていないと思い出してしまう。
こうなるとやはり敵が出てくるのを待つしかないのだが、そう都合よく出てきてくれるだろうか?
「見えてきたぜ」
スパーダの言葉に前を注視してみると、確かに廃墟の街並みが確認できた。あそこが彼いわく『敵がいそうな場所』らしい。
「いるかな。敵」
「どこぞのスコードロンが待ち伏せてくれてるさ。多分な」
「何でわかるの?」
「俺が『情報屋』にそう流してるから」
「……………」
………まさかこの男、自分の情報をエサに稼ぎ口を釣り上げているのか?
恐らくは『あのライダーは最近どこそこによく現れて、そのバイクは超高値で売れるらしい』とか言って。
自分のスコードロンのリーダーのダインは『情報屋』からスパーダの情報を手に入れていたが………つまりあれは、『釣られた』という事だったのか。
…………、うん。
ムカついてきた。
「さて、俺が今あんたからわき腹をグリグリされてる理由は例によってわかんねーんだけども。見てみ、ホラ」
ささやかな仕返しをするシノンに、双眼鏡が手渡された。
進行方向に向けて覗いてみると、街へちょっと入った広い道路に、瓦礫の山がいくつかあった。
「いかにも誰かが潜んでそうじゃねーか?」
「まあね。あの道はちょっとリスクが高いから別の道を」
「いや、このまま行くよ?」
しれっと。
当然のように、スパーダはそう言った。
「……え?ま、待って待って!あそこはバイクで突っ込んじゃダメだよ!?十字砲火されて終わりだって!!」
「いや流石に直では行かねーさ。シノンさん、ちょい肩支えててくれ」
そう言いつつ、スパーダは右手でウィンドウを呼び出して操作する。
見たところ所持武装の一覧らしい。
するとスパーダはあろう事か―――ハンドルから両手を放した。
バイクから加速力が消え、慣性の力だけで前へと進んでいく。
それと同時に、武器が二つスパーダの手にオブジェクト化した。
「えっ?」
シノンの目が点になる。
今この馬鹿がその両肩に担いでいる、色々と露骨すぎるこの武器は………
「ぱっ、パンツァーファウスト!?しかも二挺!!」
「はっはーご明察!!チリになれロケットランチャー最高イエーーーーッッ!!!」
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