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二本の弾道予測ラインが二つの瓦礫の山にぶつかり、そして引き金が引かれた。
ドシュッ!!という噴射音と共に二つの弾頭が発射され、それと同時に。
「しっかり掴まってな!!」
「わっ!!」
スパーダは役目を終えたパンツァーファウストを投げ捨ててハンドルを握り直し、一気に加速。
弾頭を追うように街の中に突入する。
そして彼の予測通りに、二つの瓦礫の山からそれぞれ三人ほどのプレイヤーが現れ、スパーダとシノンに向けて銃を構える……
…………その前に、パンツァーファウストの弾頭が炸裂した。
唸る轟音と共に、戦車すら砕く爆発が巻き起こる。
「威力はイカすんだけど使い捨て装備なのが寂しいよな、コレ」
一瞬にして瓦礫の山とプレイヤー六人を消し飛ばしたスパーダは、そこでバイクを横向きに停車した。
ひらりと座席から飛び降り、つられて降りたシノンを振り向いて言った。
「シノンさんはコイツの陰に隠れてな。装甲付けてるから盾になるし」
「手伝わなくていいの?」
「この乱戦じゃスナイパーの本領は発揮できねーだろ?しかもその銃、見たトコ超激レアの対物狙撃銃(アンチ・マテリアル・ライフル)だし。ドロップしたら洒落にならんぜ」
「ん………わかった」
彼の情報収集という目的から見て、この展開は理想的だ。
あの時のようにバイクに乗った状態ではなく、彼は今地面に降りている。
つまり。
最大のキーポイントである、彼の戦闘スタイルが明らかになる。
ここは喜んで観客席に立たせてもらうべきだ。
「(でも、ちょっと参加したかったんだけどなあ……)」
実は微妙に血の気が多かったりするシノンは小さく呟き、バイクの後ろに隠れる。
頭を半分だけ出してみると、スパーダがこちらを見ていた。
「まー任せとけって。あんたが一発俺に惚れ直すくらいに―――カッコよくキメてやるからよ」
へらり、と軽い調子と表情でそう言った。
直後。
彼の目の色が―――変わった。
(え………)
ぞくり、とシノンの背筋に何かが走った。
さっきまでの軽い調子から一転、研ぎ澄まされた刃のような眼光。
彼が身体ごと振り向き、その背中をシノンに見せると同時――――いくつもの弾道予測ラインがスパーダの身体にぶつかった。
「ッッッッッ!!!!」
彼が動く。
横、ではなく前に低い姿勢で全力で駆け出し、赤いラインを全て背後にやり過ごす。
凄まじい金属音と共に、全ての銃弾がバイクに激突した。
(盾にはなってるけど……見てられる状況じゃない!!)
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