28/38
183人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
二本の弾道予測ラインが二つの瓦礫の山にぶつかり、そして引き金が引かれた。 ドシュッ!!という噴射音と共に二つの弾頭が発射され、それと同時に。 「しっかり掴まってな!!」 「わっ!!」 スパーダは役目を終えたパンツァーファウストを投げ捨ててハンドルを握り直し、一気に加速。 弾頭を追うように街の中に突入する。 そして彼の予測通りに、二つの瓦礫の山からそれぞれ三人ほどのプレイヤーが現れ、スパーダとシノンに向けて銃を構える…… …………その前に、パンツァーファウストの弾頭が炸裂した。 唸る轟音と共に、戦車すら砕く爆発が巻き起こる。 「威力はイカすんだけど使い捨て装備なのが寂しいよな、コレ」 一瞬にして瓦礫の山とプレイヤー六人を消し飛ばしたスパーダは、そこでバイクを横向きに停車した。 ひらりと座席から飛び降り、つられて降りたシノンを振り向いて言った。 「シノンさんはコイツの陰に隠れてな。装甲付けてるから盾になるし」 「手伝わなくていいの?」 「この乱戦じゃスナイパーの本領は発揮できねーだろ?しかもその銃、見たトコ超激レアの対物狙撃銃(アンチ・マテリアル・ライフル)だし。ドロップしたら洒落にならんぜ」 「ん………わかった」 彼の情報収集という目的から見て、この展開は理想的だ。 あの時のようにバイクに乗った状態ではなく、彼は今地面に降りている。 つまり。 最大のキーポイントである、彼の戦闘スタイルが明らかになる。 ここは喜んで観客席に立たせてもらうべきだ。 「(でも、ちょっと参加したかったんだけどなあ……)」 実は微妙に血の気が多かったりするシノンは小さく呟き、バイクの後ろに隠れる。 頭を半分だけ出してみると、スパーダがこちらを見ていた。 「まー任せとけって。あんたが一発俺に惚れ直すくらいに―――カッコよくキメてやるからよ」 へらり、と軽い調子と表情でそう言った。 直後。 彼の目の色が―――変わった。 (え………) ぞくり、とシノンの背筋に何かが走った。 さっきまでの軽い調子から一転、研ぎ澄まされた刃のような眼光。 彼が身体ごと振り向き、その背中をシノンに見せると同時――――いくつもの弾道予測ラインがスパーダの身体にぶつかった。 「ッッッッッ!!!!」 彼が動く。 横、ではなく前に低い姿勢で全力で駆け出し、赤いラインを全て背後にやり過ごす。 凄まじい金属音と共に、全ての銃弾がバイクに激突した。 (盾にはなってるけど……見てられる状況じゃない!!)
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!