183人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
この位置から観察する事は無理。
そう判断したシノンは、バイクの後ろから飛び出した。赤いラインがいくつかぶつかったが何とか回避し、手近な廃墟の中に駆け込む。
その二階に駆け上がると、窓にあたる穴からマシンガンを連射しているプレイヤーがいた。
銃撃の音で、自分には気付いていない。
(そこ邪魔!!)
シノンは素早くヘカートを構えてスコープを覗き、そして引き金を引いた。
精密な狙いもくそもないが、命中率に関するスキルを取りまくっている上にこの近距離。逆に外しようもない。
轟音と共に放たれた50BMG弾が、そのプレイヤーを壁ごとポリゴンに分解した。
「不意討ちでごめんね。でも狙撃手の本分ってことで」
小さく謝って、急いでその穴から外を覗く。
スパーダの姿はすぐに見つかった。
けれど。
「う……わ………っ」
それを表現する言葉は、すぐには見つからなかった。
あちこちから放たれる弾丸と赤いライン。
その真ん中に、彼は吹き荒れていた。
……絶対に、目を離しちゃいけない。
シノンは唾を飲み込み、食い入るようにその光景に見入った。
スパーダの正面にある、三人のプレイヤーが作るマシンガンの銃列。
その掃射に対して、あろう事か真正面から彼は突っ込んでいく。
無数の銃弾と弾道予測ラインを横にステップして、屈んで、小さくジャンプしてそれらをことごとく掻い潜るその様は『走る』というか『進む』といった感じだが、その速度は緩まない。
「く、この野郎!!」
一人のプレイヤーがそう毒づいた瞬間、三人の弾道が変わった。
スパーダという『点』を狙う連射から、スパーダがいる『面』を狙う弾幕へと。
「っとぉ!!」
しかしそれを一瞬早く予見した彼が、右ナナメ前に向かって大きく跳んだ。
直後の弾幕を悠々と飛び越し、廃墟の壁に『着地』する。
一瞬。
突然の立体的な動きで三人の視界から外れたその一瞬で、スパーダが腰のハンドガン二挺を抜いた。
その武骨なフォルムが明らかになってようやく、シノンはその銃が何であるかがわかった。
「《デザートイーグル》!!」
『ハンドキャノン』の異名をとる、市販されている拳銃の中で最強クラスのバケモノ銃。
一度画像で見て、誰が使うのコレと思ったのを覚えている。
「んなっ!?」
刹那の時が過ぎ、三人のプレイヤーが慌ててスパーダの姿を捉えた。
その時には、もう遅かった。
ドゴン!!!!
放たれた二つの破壊の塊が、三人をまとめて貫いた。
最初のコメントを投稿しよう!