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デザートイーグルの威力に萎縮して物陰に隠れたプレイヤーを、そこに向かって走りつつ立て続けに引き金を引いてその遮蔽物ごと撃ち抜く。
その遮蔽物のせいで弾丸はクリーンヒットしてはいなかったが、スパーダはその首にナイフを突き込んでトドメをさした。
(なるほど………遮蔽物がむしろアドバンテージになってるんだ)
遮蔽物があれば相手から弾道予測ラインは見えないし、その遮蔽物ごと貫ける火力があればそれが予測不能の攻撃になる。
………これは使えそう。
そう思っている間にも、スパーダは遮蔽物に飛び込んで敵の銃弾をかわし、デザートイーグルを口にくわえ、片手で弾倉をすばやく交換し、その遮蔽物越しにバケモノ銃を撃ちまくる。
相手が怯んだと見るや飛び出し、最短距離で接近してまた急所にナイフを突き立て……
(…………あれ?)
そこである事に気付いた。
(何でいちいちナイフで仕留めてるんだろう)
デザートイーグルで充分に倒せる状況でも、なぜか彼は最後の一撃に執拗にナイフを使っている。
複数重なった弾道予測ラインを掻い潜るほど反応速度が凄まじい彼だけど、それでもそのせいで無用なダメージを受けているシーンがあった。
すると、そんな事を考えている内に。
「あっ」
とうとう、敵プレイヤーが一人だけになった。
そのプレイヤーはもはやこれまでも見たのか、背を向けて一目散に逃げ出した。
「敵前逃亡はみっともないよ?」
シノンはそう呟き、ヘカートのスコープを覗き込む。
ここまできっちり観戦していたんだ。
もう少しくらい混ざってもいいだろう。
その背中に狙いを合わせ、引き金を引こうとしたところで。
スパーダがその後を猛スピードで追いかけていった。
「は、速っ!?」
驚きが口に出てしまった。
凄まじい走力だった。
逃げるプレイヤーとの差があっという間に縮まっていく。
(さすがに<<闇風>>よりは遅いけど……敏捷パラメータはゲーム内で上位に食い込んでる)
そして肉食獣はとうとうプレイヤーに追い付いた。
後ろからのタックルで転ばし、馬乗りになって―――その脳天に、刃を叩き込んだ。
カシャアン、と最後の敵プレイヤーがポリゴンに分解される。
彼一人の手で、スコードロンが全滅した瞬間だった。
「………凄い…………」
胸が高揚した。
私は今、間違いなくGGOの極限(ハイエンド)を目にしている。
はたして彼は今、どんな心境なんだろうか。
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