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と、その時。 虚脱したかのように立ち尽くすスパーダの背後、建物の中から、一人のプレイヤーがこっそりと姿を現し……ハンドガンの銃口を彼に向けた。 赤いラインが彼の後頭部にぶつかる。 (………まだ残ってた!!) シノンは慌ててヘカートを構え直し、そのプレイヤーを照準に収める。 しかし、間に合わない。 ハンドガンの乾いた発砲音が鳴り響き――――それと同時に。 ひょい、と。 そんな効果音がぴったりな軽い動きで、スパーダが一歩横に跳んだ。 弾丸が一瞬前まで彼がいた空間を貫く。 彼は――――一度も後ろを確認してなんかいなかったのに。 直後にスパーダの左手が閃き、絶句するプレイヤーにデザートイーグルの引き金を引く。 そして同じタイミングで、シノンのヘカートが火を吹いた。 50AE弾に50BMG弾という極悪すぎるコンボを同時に喰らい、そのプレイヤーは跡形もなく消え去った。 (今、あいつ………後ろを見ずに避けた………?) シノンもまた絶句した。 銃弾の見切りだけは、パラメータではなく自身のセンスに頼るしかない。 なら彼は一体、どれだけ鋭敏な反応速度を持っているのだろう? 「ん?」 すると、ふいにスコープの視界が黒く染まった。 スコープから目を外してみると、それは自分に向かって飛んでくる黒い球体のせいだとわかった。 そしてスパーダはまさに投球モーションを終えるところであり、ヘカートの銃声を聞いて反射的に『それ』を投げつけてきたのである事がわかった。 彼が自分の姿を確認し、「あっ」と声を上げた。 「な」 そして。 その黒い球体が何なのか、すぐわかった。 これは。 「なーーーーーーーーーーっっっ!?!?」 ちゅどーん。 <7> 「覚悟はいい?」 「……できてません」 「殴っていい?」 「……いけません」 すんでの所で窓から身を投げてスパーダの誤爆から逃れたシノンは、自分の足元に彼を正座させていた。 しかし今シノンが抱いている彼への怒りの比率は、危うくミスで爆殺されそうになった事より、身を投げた際にお姫様抱っこの体勢で受け止められた事の方が大きかったりする。 「いやホント反射で……敵の残党かと思って。それで思わずプラズマグレネっちゃって………」 「なにその、略せてるかどうか怪しいレベルの語呂の悪さ」 「プラネっちゃって………」 「言い直せって事じゃないよ」 しかも何か語感がいいし。 宇宙的なイメージがする。
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