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すいません調子乗りましたマジすいません、と額を地面に擦り付けるスパーダの背中は、まるでダンゴムシのようだった。
自分は何を思い違っていたのか。
こいつは純然たるバカであり、歴然たるバカであり、超然たるバカなのだ。
まさかそんなバカの背中が大きく見えた、なんて。
まったく、不愉快な錯覚だった。
<8>
「まー色々あって大変だったろうけどさ、終わってみりゃそこそこ楽しかったろ?」
「その色々とやらの九割はあんたが原因だけどね」
グロッケンを目指して荒野を走るバイクが一つ。
運転手はスパーダで、その肩に掴まる形で後ろにシノンが乗っている。
本来なら彼の身体にしっかりとしがみつくべきなのだが、先刻発生したラッキースケベのせいで彼女は頑としてそれを拒否していた。
ちょっと激しく横揺れしたら、瞬く間に落ちてしまうだろう。
「シノンさんは街に着いたらもうログアウトか?」
「さすがにね。ほんと、ここまで騒がしいパーティ行動は初めてよ」
「そだな。俺もパーティ行動は初めてだ」
少しは自重しろ、という意味のちょっとした皮肉のつもりだったのだが、どうやら通じなかったらしい。
もはやお馴染みの軽い笑いと共に、自分と似たような返事を返してきた。
「………え?パーティ行動が初めて?」
「ああ」
スパーダが頷く。
「俺このゲームで誰かと協力とかした事なくてさ、いつもソロだったんだよ。さっきみたいな急場は過去に無かった訳じゃねーけど、それを突破しても達成感みたいなのは無かったな」
やりこみの差がモロに出るこのGGOで、ずっと一人で力を着けていくのは難しい。
もっとも、自分も一人でここまで鍛えてきたプレイヤーなんだけど。
シノンは黙って彼の言葉を聞く。
………もしかして、彼はそれが寂しかったんだろうか。
「ただ鍛えて、倒して、鍛えてでもうちょっとしたルーティンワークになってたからさ。新鮮だぜ………誰かとギャーギャーしながら動くのは」
「………………」
「何回かボコられたのも全部引っくるめてさ、今日はマジで楽しかった。やっぱ近くに誰かがいるってのはいいな」
するとそこでスパーダはハンドルを片方離し、身体を半回転させてシノンを見た。
「シノンさん。それがあんたみたいな可愛い娘なら、特に」
そして彼は笑った。
お馴染みのからからした軽い笑いでもなく、あの時見せた乱暴な笑みでもなく。
裏表のない純粋な―――屈託のない、少年の笑顔だった。
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