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「グレネードは例外として、武器は基本その二つ。ま、基本的には近接戦闘専門だと思ってくれりゃいいよ―――お、見えてきた。そろそろ着くぜ」 見ると、確かにグロッケンの入り口が見えてきていた。 波乱に満ちたパーティ行動も、もうじき終わるらしかった。 <9> 「おつかれーっす」 グロッケン内部に到着したバイク。 スパーダの気の抜けた声と共に、シノンは座席からひょいと降りた。 しっかり安定した地面の感触が、なぜか久しいものに感じる。 「何度も言うのもアレだが、ありがとう。今日は楽しかった」 「そう、よかったね。次はキリトでも連れてってあげたら?」 「逆にアイツ運転させてくれって頼んできそうだけどな」 「……ところで、スパーダ」 「うん?」 「やっぱり、今回も出ないの?BoB」 「んー、まぁ見物としゃれこませてもらうよ。見た感じシノンさんは出るんだろ?応援してんぜ」 「………そ。ありがと」 スパーダへのリベンジを誓ったシノンにとっての壁は、競争にあまり興味のない彼をどうやって戦いのステージに引きずり出すかだったのだが、今シノンは、出ないなら出ないでいいかなと思い始めていた。 自分が望んでいたのは、神経を張り詰めさせた駆け引きだ。 こんな風に、あらかじめ敵の詳細な情報を手中に収めての戦いは――――ゲームを攻略本を読みながらプレイするような事は望んでいない。 結局スパーダはシノンを疑う事もなく、自分のパラメータを余す所無く教えてしまった。 それは果たして信頼の表れか。 もしくは………ただ、口が軽いのか。 (こう思うのは身勝手なんだろうけど) やっぱり………少なからず失望を禁じ得なかった。 シノンはさっきまで燃えていた炎が、急速に小さくなっていくのを感じた。 しかしこれは本当に個人的な話。 彼を責める筋合いなど、あるはずもない。 シノンはバレないように小さくため息を吐くと、ぷいとスパーダに背を向けた。 「じゃあね。よかったね、今日は儲けられて」 「おう。そっちは儲けられたかい?」 「………。分け前の話?」 「いや違う。そうだな、回りくどくなく言えば」 スパーダは一拍開けて、言った。 「俺の戦力分析は満足のいく成果が出たか、って話だぜ」 「……………え?」 「え?って、いやバレバレっしょ。あんな露骨に装備探りにこられちゃ、誰だって気付くって。まぁ面白いからそのままにしといたけど」 ………………。 なん、だと?
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