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「でも何か難航してるっぽかったし、一回見ただけじゃ不完全だったろうから色々補足しといたんだけども………どうだ?まだ何かある?」
遠慮すんな。
別に隠しとくようなモンじゃない。
そう言われても、今のシノンに何か新しく質問できるような精神的余裕はない。
(………………つまり)
つまり、アレか。
教えても問題ない、と。
私に教えたところで………困る事なんて一つもない、と。
何だか思考が飛んだ気がしなくもないが問題ない。
ここで大切なのは―――今自分の中に、恐らくは今までで最大級の怒りと屈辱が燃え盛っているという事だ。
「っと、あんたもうログアウトするんだったよな。悪いな、ガチャガチャ言って引き止めちまってよ。んじゃ、そろそろ俺も――――」
「スパーダ」
メニューを呼び出してログアウトボタンを押そうとしたスパーダの右手を、シノンががしりと掴んだ。
「ちょっと今から犯罪防止(アンチクリミナル)コード出る事するけど、許してね」
「へ――――――」
スパーダが何か言う前に。
シノンは彼のマフラーを両手で掴み、グン!!と強引に自分の方へと引き寄せた。
シノンのすぐ目の前に、面喰らったスパーダの顔が急接近する。
自分より背の低い人間に胸ぐら掴まれたスパーダは、不安定な姿勢で硬直した。
「え、ちょ、何――――」
「スパーダ」
再び燃え上がった炎を、私はそのまんま口から吐き出した。
すごく恐い顔をしていたと思う。
「あんた―――三週間後のBoB、絶っっっ………対に出場しなさい。私が、直々にその人喰い脳ミソをブチ抜いてあげるから」
対するスパーダの返答は、不敵な笑みと共に返された。
「――――――………、ひゃい」
ただし、その言葉が女みたいな裏声だった辺り……その笑みは単なる虚勢(ポーズ)だったらしいが。
それから、およそ一週間。
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