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明日菜に導かれるままに部屋に入ると、自動的に電気とエアコンが付いた。 ………ゲームの世界に飛び込めるこのご時世にこう言うのもなんだけど…… (この家……今この時代より十年くらい未来未来してる気が……) 「統合制御パネルがこうしていろいろとやってくれるんだけど………いきすぎでしょ?」 詩乃が思った事を察してなのかはわからないが、明日菜がちょっとだけ苦味の混じっていそうな笑みを浮かべた。 「すごいね……。他にも何かあったりする?」 「自動でドアをロックしてくれたりとか自動でお風呂を入れてくれたりとかもしてくれるんだけどね。そりゃあ便利なのは便利なんだけど………」 その先の言葉は濁した明日菜。 言おうとした事はわからなくもない。 温かみに欠ける、のだろう。 機械が何でもやってくれるというのは便利な事だけれど、それはつまり、逆に言えば誰の意思も介在していないという事だ。 『自分の手で』ロックをかけて、『自分の手で』風呂を入れて、『自分の手で』電気をつける。 『誰かの手が』そうしてくれるのも、またしかり。 些細な事に思えるけれど、それでも人の思いに欠けるのはある種の喪失というものがあるのかもしれない。 (何でも機械化されるっていうのも考えものってことかな) 「まあまあ、くつろいでよシノのん。自分の家だと思ってさ」 「そう?ありがとう。じゃ遠慮なく」 「そうそう上着なんか脱いじゃってってわあああいきなりスカートを!?」 実にナチュラルな流れでスカートのホックに手をかけた詩乃に、驚きの声を上げる明日菜。 すると詩乃はあっさりとそこから手を放して、軽く身体を揺らして笑った。 「ふふふふっ、冗談冗談。じゃ、上着脱がせてもらうね」 「もー……私がツッコまなかったらシノのんどうするつもりだったの」 「脱ぐ?」 「本気だった!?」 いやいや冗談だよ、と詩乃はまたクスクスと笑う。 「もー、どこまで冗談かわかんなくなってき………ん?あれ?」 「どうしたの?」 「いや、なんか違和感が……まいっか。あ、そうだお風呂入ろうシノのん!」 「うん。今日八時からALOに集合だしね。明日菜とお母さんの後に入らせてもらうよ」 「何言ってるの!」 「え?」 「一緒にだよ!」 「ええーっ!」 からかう気持ちなんて欠片もないに違いない笑顔でそう言われ、そしてずるずると風呂場に引っ張られていく詩乃。 友達とお風呂。 またもや彼女にとって初めての体験であった。
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