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ちゃぷん。
もうもうとした湯気に満たされた予想以上に広い浴室の中、湯船に浸かった詩乃がぽつりと言った。
「というかこれ、一番風呂だよね……いいのかな、私が明日菜のお母さんより先に入っちゃっても」
「いーのいーの。最近物分かりいいし」
湯船の隣で身体をスポンジで擦ってあわあわにしている明日菜が笑いながら答えた。
最近、という所に詩乃は少し反応した。
明日菜のお母さんが外見よりは優しいことはもうわかったけれど、やっぱり、ちょっと怖い。
さっきと逆の事を言うようだが、外見というのは大きな影響力を持つのだ。
やっぱり後でちゃんと謝っておこう、と思っていると、明日菜がまるでその思考を補足するかのように言った。
「ちょっと前までは本当にカッチカチの石頭だったんだけどね。夜に外に出ようとしたら危うくドアロックされるとこだったよー」
「へ、へえ……」
どう返せばよいのか。
ひとまず無難な相づちをうつ事にした。
「でもうらやましいなあ。こんなにお風呂が広いのって」
「こればっかりは本当にありがたいよー。あ、ねえシノのん」
「なに?」
「背中洗ってほしいなー」
「甘えないの」
そう言いつつも詩乃は明日菜から泡のついたスポンジを受け取って湯船から上がり、小さな椅子にちょこんと座る明日菜の後ろに回る。
「じゃ、いくよ」
「おっけー」
スポンジで上から下に擦ると明日菜が「んー」と気持ちよさそうな声を上げたのでちょっと面白くなってさらにごしごしする。
「あーそこそこ、きくぅ……」
「うわぁ、アスナ、何かおじさんくさいよ」
くすくす笑う詩乃。
……しかし、それにしても。
(アスナ背中キレイだなぁ)
背中、というか肌が。
それこそ『白磁の肌』なんて表現がまんま当てはまりそうなこのハリだのツヤだの肌触りだのはハンパではない。
それとさっき脱衣場で見た時や、今もリアルタイムで感じている事なのだが。
(ボディラインとかも……こう………)
理想の体型という言葉をまんま人の形にしたような彼女の身体。
ここまでバランスの取れた完璧な身体は、世界にもそうはあるまいとさえ思える。
一介のオンナノコとして、神様とやらにクレームを付けたくなってきた。
これは余りにもアンフェアである。
それと、ボディラインと言えば。
「………、」
詩乃はちょっと手を止めて視線を落とし、自分の二つのソレを見る。
自分のこれはどうなんだろう。
平均サイズ?
(………だよね、きっと)
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