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ひぃぃぃん、と軽い翅の音を立てつつ、シノンは眼下にある街の光を見下ろす。
明日菜と話した後、もう一度この世界を見直したくなって、彼女は今夜空の高みを舞っている。
いくら胸のつっかえが取れたと言ってもやはりさっきの今の話、自分の中での完全な解決とはなっていない。
だけど、ここから見下ろすこの景色は、今までよりもずっと澄んで見えた。
改めて思う、やはりここは自分の中のもう一つの世界なのだと。
そう思った所で、そろそろ行こうかと集合場所の木の家に進路を変える。
「…………………」
向かう途中で、いきなり加速してみた。
九十度直角に曲がったりもしてみた。
慣性Gがハンパなかったのでやめた。
そんなどこかで覚えのある動きを交えつつ、シノンは新生アインクラッド二十二層の木の家の前に降り立ち、ドアをノックする。
「はーい」
ほんわかした声と共にドアががちゃりと開き、水色の髪をした水妖精(ウンディーネ)が出迎えてくれた。
「アスナ、お邪魔します」
「もー、そういうのはもう言わなくていいの」
「よっ、シノン」
イスに座ってのんびりジュースを飲んでいる黒色スプリガンのキリトが右手を上げて挨拶してきたので、つられて右手を上げてそれに返す。
「おばんー」
「こ、こんばんは……うー」
「久し振り、シノンさん!」
「おーっすシノンちゃん」
「ふふ、皆久し振り。リズ、シリカちゃん、リーファちゃん、クラインさん」
鍛治妖精(レプラコーン)に自分と同じケットシー、風妖精(シルフ)に火妖精(サラマンダー)。
こうして全員集合している図を見ると、本当に大人数だ。
自分を含め、この人達が全員キリトを中心に集まってきたのだと考えると、あのジュースをすすっているスプリガンのコミュニケーション力の高さに感心する。
ふと見ると、シリカがウィンドウを睨んでうーうー言っている事に気が付いた。
「シリカちゃん、学校の宿題?」
「は、はいぃ……。私数学苦手で……」
「明日休日だし、そんな焦る事なくない?」
「り、リズさん、今やらなきゃ絶対面倒臭さが二倍になっちゃいます。あぁぁ、数式が私をいじめる……。キリトさん、今絶対寝ないでくださいね!?」
「なんで俺っ!?」
いや実際、寝椅子に座って腿の上に小竜ピナとナビゲーションピクシーのユイを乗せて眠る彼は反則レベルに眠気を誘ってくる。
スプリガンの幻惑魔法じゃないだろうなー、とはリズベットの評だ。
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