scene004

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でも、まぁ綺麗なお姫様は恋愛なんて俗気なものは知らなくて良い。 「でもマルの事が全部欲しいのは本当。マル以上はもう無いよ」 「…茅ヶ崎は姫で俺は騎士だからこれ以上は無い」 いきなりキョトンとした子どもみたいな表情に惹き込まれそうになる。大きな瞳が真ん丸くなって俺を無垢に見上げた。 ゴロンと俺の肩に頭を乗っけて、居心地が良さそうにすり寄って、秘密事を話すかのように小さな声で囁く。そんな小さな小さな俺を大きく惑わせる声は愉しげに響く。 「この部屋さ。騎士が入れるって事が不思議じゃない?」 「姫を守るためだからじゃないのか?」 「学園の最上位の生徒会長や風紀委員長だって入れない部屋で?一体何から守るの?」 茅ヶ崎は柔い手付きで俺の髪を弄りだす。時折耳に触れる指先が危うくさせた。 「この部屋があって今までの姫と騎士がそれだけの関係って事自体が現実的じゃないと思うけど」 茅ヶ崎が俺を見て微笑む。
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