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家までもう少しというところで、道端に誰かが倒れているのを見つけた
「誰か倒れてる…?」
「本当だ、行ってみよう」
いつもとは違う光景にアレンは少し怯えるが、タリスは落ち着いて状況把握につとめる
タリスはゆっくりと近づき、その人物を抱き上げた
身体中がぼろぼろになっている
それはどうやら年端も行かぬ女の子
黒い髪は乱れに乱れ、顔は土で汚れている
身体中に生傷があって、服もぼろぼろになってしまっていた
「…大丈夫かなぁ」
「まだ息はあるみたいだ
怪我も負っているようだし、手当しなくちゃいけないな」
心配そうに父を見上げるアレンの頭を優しく撫でると、タリスは女の子を担ぎ上げて家に連れて帰った
「……ん」
少女が地面ではなくベッドの上で目を覚まして一番最初に見たのは、自分と同じくらいかそれよりも少しだけ大きい男の子の顔だった
「あ、起きた!!
おとーさーーん!!起きたーー!!」
「うるせええ!!
病人の前では静かにしろお!!」
「うぅ…ごめんなさい」
「分かればいい」
少女が目を覚まして興奮したアレンはタリスを大声で呼んだ
その声の大きさが少女の傷に響く、とタリスは少女を気遣ってアレンを叱るが、実際のところタリスのほうが煩い
「………」
二人のやり取りを聞き流しながら、少女は表情一つ変えず押し黙っていた
「やぁ、具合は大丈夫そうか?」
「……ぇ、あ、はぃ……」
タリスが少女に話しかけると、少女はもじもじしながら答えた
「ね、ね!
名前なんていうの!?何歳!?どこからきたの!?何で倒れてたの!?」
「質問は一つずつ!!」
「はぁい…」
「…………ノア」
二人の会話に、弱々しい声が入ってきた
「「え?」」
アレンとタリスの声が重なる
「ノア、って言います…私」
ノアは慣れていないであろう敬語で、再び自己紹介をした
「ノアって言うんだ!!
素敵な名前だね
僕はね、アレンって言うんだ!」
「俺はタリスだ」
「あの……」
「まあまあ、積もる話もあるようだが、とりあえずは飯だな」
「うわーい!!ごはーん!!」
「……」
「ほら、お前さんだって腹は減るだろ?」
「………はい…」
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