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その言葉に
私は唇を噛みしめた。
室長は…
私がどんな気持ちでここに来たのか
全然わかってない。
胸の奥にはわずかに怒りが滲(ニジ)み…
…すぐに虚(ムナ)しさに変わる。
もう…帰ってしまおうかと思った。
でも、もう深夜。
電車では帰れないし、室長に送らせるわけにもいかない。
家までをタクシーで帰る手持ちは十分にあるし、運転手を呼ぶことだって出来る。
だけど、彼の前で『お嬢様』にはなりたくない。
実際、今の会社で働くようになってからは、ちゃんと自分のお給料の範囲内でやりくりしている。
限られた資金の中でやりくりするもの案外楽しく、それが個人であっても、会社であっても同じなんだと学習もした。
だから…
帰ることは出来ない。
「シャワー…借ります」
私は今入って来たドアを開け、廊下に戻り、一人バスルームに向かった。
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