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◆閑話「早伊原との日常2」
「将来、タイムマシンってできると思うか?」
いつもの放課後、生徒会準備室。特に今日はミステリが発生したわけではなかったので、いつものようにそれぞれ読書をしていた。
彼女が本から視線を上げる。
「何ですか、急に」
「いや、今読んでた小説に出てきてさ。ずっと彼に片思いしていた女性が主人公なんだけど、結局彼女の恋は叶わなくて。だから彼女、研究者になってタイムマシンを開発したんだよ。で、それで過去に行って、いろいろやって、彼と結婚した未来を手に入れたわけ。でもそのタイムマシンは過去への一方通行で、彼との結婚生活、自分は楽しめない。……でも彼女、満足そうな笑顔を浮かべて死んでいくんだ」
彼女は眉根をひそめる。
「ドン引きしました。凶悪なストーカーじゃないですか」
「おい、おいおいおい。確かにどこからが一途で、どこからがストーカーなのかはよく議論される点だが、これはフィクションなんだから、ロマンチックと言え」
「先輩の口からロマンチックという言葉が出たことに驚きました。何か気持ち悪いです」
「君ってどこまでもひどいやつだよね」
彼女は恋愛に興味がないのであった。だからこそこんな淡泊な反応が返ってくる。
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