閑話「早伊原との日常2」

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「でも……そうですね。タイムマシンができるかどうかはちょっと気になりますね。さっそく明日、実験しましょう」 「実験? どうやって?」 「それはお楽しみということで」  次の日。いつもの放課後、場所は、中庭、一本桜の下。彼女はスコップを僕に渡して言う。 「ここ掘れ、ワンワン」 「一つ、どうして掘らなきゃいけないのか。二つ、どうしてスコップが一つしかないのか。三つ、どうして君は心底楽しそうな笑みを浮かべているのか」 「実験ですよ。穴掘りが必要なのですが、男性じゃないといけないんです」  嘘つけと思ったが、僕はおとなしく穴を掘ることにした。掘っている最中、教師が来たが、桜の木の根元治療だと彼女が答えていた。もちろん、嘘だろう。縦に五十センチほど掘る。額から汗が流れた。まくった袖についた土を払って言う。 「もういいか?」 「もうちょっとです。先輩、ファイト」  彼女はにこにこと、無邪気に微笑む。機嫌が良いように見えた。そのことについて聞くと、「私は、自分のために一生懸命何かをしているのを見るのが好きなんです」だそうだ。埋めるのは彼女にやらせようと揺るがない決心をした。  結局一メートル程穴を掘らされた。  僕が穴の横でバテて座っていると、彼女が鞄から金属製の箱を取り出した。 「何それ、タイムカプセル?」 「まあ、みたいなもんです。最も、何重にもしてあって、未来永劫腐らずに残るようにしてありますが」  結局、埋めるのも僕がやらされた。穴に関することに早伊原が関わると、この実験には意味がないらしい。  穴を埋め、スコップで叩いて表面を平らにしてから生徒会準備室に戻る。 「で? 結局、どういう実験だったんだよ」 「待ってください先輩。ほら、あと一分で五時半になります」  だから何なのだろうか。彼女が期待を持つ目で生徒会準備室のドアを見つめる。そういえば、今日は鍵をかけていない。万が一にも彼女の裏の顔が見られないように、こうやって鍵をかけているらしいが、いいのだろうか。 「……五時半になりましたね」  時計を見る。その通りのようだ。 「失敗?」 「そうですね。……あの箱には、今日の年号、日付、そして五時半と時間を指定した未来人祝賀パーティの招待カードが入っているんですよ」 「……ああ、なるほど」  あれを見た未来人が、タイムマシンを持っていたなら来られるというわけだ。
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