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「ネム……」
「いや、フルネームを……」
「嫌だ」
「……………………」
絶対に話さない気らしく、口を一文字にしてそっぽを向いてしまいました。まあ、確かにあんなことがあった後じゃ、話す気にはなれないでしょうが。
「……えっと、家に連絡とかは……」
「いらない。あいつら、私のことなんか心配どころか、娘とさえ思ってないんだから」
ふぅん、と差し障りない返事をしながら、ふと、ネムさんの口元に目線が移りました。絆創膏のガーゼに薄く血が滲んでいました。同じ女性として、見ていて気分の良いものではありません。
と言う訳で、早速本題に入ります。
「あなたの願いを叶えましょう」
「…………………………」
ネムさんは訝しげな表情で私を見ます。いや、気持ちは分かりますが、ここまで来たらそこは信用して欲しいものです。
「……何が目的?」
「?」
何を言っているのか分かりませんでした。
「私に恩でも着せて、後で金でもせびろうって言うの?」
「言うのって……私はまだ何も言ってませんよ?」
警戒心を剥き出しにしてネムさんは更に続けます。
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