----あの日の----

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ガチャリとドアを開け、夏月さん達と一緒にクルマの外に出て見れば、 夏月さんは脇目も振らずに海岸方面へと歩き出す。 夏月さんが立ち止まった場所。 海岸を望むその場所には砕石が敷かれ、一応の整地がなされていて…… そして、敷地には、東日本大震災の慰霊碑が建てられていた。 「これじゃあ、もう……亮のお墓の場所が……全く分らなく成っちゃった……」 夏月さんが顔を覆う。 どうやら、ここはかつての墓地だったようだ。 そして、そこには亮さんが眠っていたんだね…… 見た目には整地がなされているけれど。墓石のあった場所、お骨の埋葬されている場所の目印は、一切無い。 この砕石の下には、お骨が埋まったままの筈なのに。 それとも、お骨はどこかに移動されているのだろうか? 「ん?」 足元をよく見てみれば、砕石に混じって御影石? ゆっくりと敷地全体を見渡してみれば、 砕石に混じり至る所に転がっているのは、 鏡面仕上げの施された御影石の欠片。 これは、津波で壊れた墓石を砕き、砕石と混ぜている? ちょっと、酷くないか?
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