第1章

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堅志郎は、高級ホテルの一室にいた。 ドンドンドン! ドアを叩く音がする。 堅志郎は部屋の入口に向かった。 「どなた?」 「ボーイです。お食事をお持ちしました。」 「入れ。」 堅志郎はドアを開けた。 浅黒の男が、食事を載せた台車を運んで入ってきた。 「失礼します。」 「食事を置いたらすぐに出ていけ。」 「チップは?」 浅黒の男は手を差し出した。 「ほら!」 浅黒の男は手の上のチップを見た。 「お客さん・・・」 「何だ?早く出ていけ!」 「お客さんは嘘つきですね?」 「何だと!」 「これは盗んだ金ですか?」 堅志郎は動揺した。 「何を言ってる?早く出てけ!」 「盗人の一生、針一本って知ってますか?」 「知るか!出ていけ!」 「虚しい一生ですよ。」 浅黒の男は、くくくと笑うと部屋を出て行った。 堅志郎は後を追いかけたが、浅黒の男はもう何処にもいなかった。
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