第1章

2/35
前へ
/35ページ
次へ
 俺はごく一般的な、〝平均的な〟男子だ。  モットーは、「目立たず、騒がず、落ち着いて」。学校という場所では、たとえば勉強ができすぎても、逆にできなさすぎても目立ってしまう。勉強に限らなくてもそうだ。運動で言ったら、百メートル走で一位になっても、逆にビリになっても耳目を惹いてしまう。目立たないためには、なにごともある程度できなければならない。  誰でも得意科目と不得意科目があるように、「5」の科目もあれば「1」の科目もあって平均で「3」を獲ることより、まさしく全教科を「3」にすることのほうが難しいと俺は思っている。なぜなら、できる科目は相応に抑えなければならないし、できない科目はやはりそれに見合った努力をしなければならないからだ。  でもそれだけの努力をしてでも〝平均男子〟でい続けるメリットを俺は感じている。目立つことは疲れるものだ。なまじテストの点がよすぎると、親から過度の期待をかけられて、勝手に俺が将来、医者か弁護士かパイロットになるものだと思ってしまうし、芸術の分野で秀でた才能を発揮しても全校生徒の前で表彰されたりしなければならないかもしれない。部活でもレギュラーになるほど優れた選手なら、毎日の練習で汗水垂らしたあげく、試合で不必要な緊張まで味わわなければならない。どうかな? 人よりできる=目立つということは、まったく「疲れる」ことばかりだとわかるだろう。  しかしなぜだろうな。自分には皆目見当がつかないのだが、そんな〝平均〟を貫徹する俺の周りには、同じく平均的な友だちが集まっているかというと、そうでもない。……うん、この表現は適切ではないな、「そうではない」が適当だ。  俺のよくつるんでいるやつらに即して言っているのだが、いやはや……、いかな俺が目立たない努力をしていても、一緒にいるやつが目立ってしまうと、そのハードルは上がってくる。さらなる細心の注意を払わなければならないということだ。ただ、近くで灯る光が強ければ強いほど、できる影ははっきりしていると言うこともできる。だから隠れ蓑としては油断さえしなければ最良のものだし、自分自身が影になってしまえばいい、とまで決意している。別にやけくそでもなんでもなく。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加