第1章 #4

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 胸許から上目遣いで言ってくる。太陽が茶色に透けた瞳に映り込み、その稚気を孕んだ怜悧な輝きを見ていると、心の奥まで見とおされているようで、俺は目を逸らして上空に目を投じなければならなかった。雲の動きが速くなっている。ここよりさらに強い風が吹いているのだろう。  森が勢いよく俺の胸をどつき、 「ここまできて嘘はつくなよ。僕たちまでばち(ばちま)があたるからね」  罰だと? なんでこんな苦しい思いをして登ったのに罰が? 罰というのならもうすでに熊の……  出辺が蛇のように手を顎先に滑らせてきて、 「ここはかつてから山岳信仰の聖地だったのよ、そう、神奈備の山として人々から崇められていたのだから」  ふん、だから神でも宿っているってか?  悪いな、俺は霊的な類はいっさい信じていないんだ。  不意に、〝霊気〟を感じさせるひんやりとした指先が喉仏を軽く押し込んできた。 「もちろん、罰は私が責任を持って担当してあげるわ」  ……信じていないが、いまはことのほか気分がいい。たまには素直に自分の感情を吐露しても、それこそ罰はあたらないだろう。  俺は雲を透過した太陽の光を浴びながら、言った。 「まあ、ほんの少しだけな」                                        了
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