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今夜は人殺しに最適な満月で、月明かりに出来る薄い影を相棒に街を彷徨う
人通りの少ない道で不安そうに歩く女の後をゆっくりと歩き
女の不安が爆発して走り出した瞬間に、長く伸びた髪を掴む
「──ひぃっ」
悲鳴なんて上げる暇がないくらいに早く手にしたナイフで首を掻き切る
「ちっ」
映画や漫画では綺麗に斬れるのに、俺とした事が首の骨と顎の骨に引っ掛けてしまい、勢いで自分の手も切ってしまう
上手くいかないもんだな
仕方なく、這いつくばって逃げようとする女の背中に勢いよくナイフを突き立てる
これも上手く行かず、ガツンと背骨にナイフが当たり、ナイフが欠けてしまう
ムカついてナイフを引き抜こうとしても、ナイフは骨を咬んでなかなか抜けない
女を踏みつけて、力を込めてナイフを引き抜いて、もう一度と思ったら
女は死んでいた
「まじかよ……」
人を殺したっていうのに、罪悪感も無ければ命をもて遊んだ充実感もない
殺す前はあんなに興奮していたのに、期待した何もかもが単なる想像だったのだと、夢と現実のギャップが襲いかかる
「こんなもんか」
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