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足の下には見ず知らずの女だった物、左手には女の髪の毛が絡みつき、ナイフと手は生暖かい血で汚れている
「──ふ。っはは」
なのに何だ。さっきまでの日常とまるで地続きで、俺はくだらない高校生のままで、明日になればくだらない悩みをくだらない友達と話すんだろう
何が足りない?装飾か?人数か?
それとも、宣戦布告の手紙を警察に出せば良いのか?
満足か?
ふと出た疑問は、まるで俺の考えた事じゃないみたいに唐突に現れた
「満足な訳ねぇだろ」
殺し足りないのか?
「そうかもしんない」
壊し足りないのか?
「それもあるかもしんない」
ならば───
くだらない自問自答だと思いながら独り言を呟くように答えていたはずだった
「ならば?」
俺は何の結論を出したんだ?
疑問に思う間もなく、足元の女だった物を踏んでいる感触が消え、左手に鬱陶しく絡みつく髪の毛の感触が消え、右手の不快なべとつきとナイフの重みが消えた
『君は死刑だよ。説明は起きてからにしよう』
目の前の街並みが平坦な物に変わり、さっきまで心の声だと信じていたモノが確かな現実感を伴って耳から聞こえてくる
俺は体をいろいろなチューブで繋がれた状態で目を覚ました
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