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「つまり!俺はまだ何もしてないって事だろ!」
「最期に家族は面会する許可が与えられてるのだが……」
俺の言葉を無視して、事務的に説明を続ける
「一応、家族には連絡はしたんだがね?レストランの予約があるからと面会は拒絶されたよ。まあ、よくある事だ」
「何で!俺が!死ななくちゃいけないんだ!何もしてねぇだろ!」
どれだけ暴れてもベッドの拘束具はピクリとも緩まない
「これは10年前からずっと行われている検診でね?こうやって、事件が起こる前に害悪の芽を摘む事で、一定の効果は上がっているんだよ」
目の端に注射器を持った看護師の姿が見える
「大丈夫。犯罪加害確定者の人権にも配慮して、苦しみのない方法で死ぬ事は許されているからね」
白衣の男はいったいそうやって何人の人を殺したのだろう。手慣れた手つきで俺の右腕に注射針を刺した
「個人差はあるがだいたい5分から10分ほどで眠気が押し寄せてくるよ。後は眠っている間に全てが終わっているからね」
注射された液体が体に回り始めると、意識がふわふわと漂い始める
俺のくだらない人生が、なんだか意味の解らないままに終わってしまう──
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