弱い者が弱い

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「……人殺しはどっちだよ」 朦朧としてきた意識を少しでも長く保とうと、独り言のような呟きを漏らす 白衣の男の嬉しそうな笑い声が聞こえてくる 「そう言えば、君はどの夢の中でも人を殺してはいけない理由を懸命に探してたね」 教えてあげようか──? 声を出すのも億劫になった俺は、白衣の男を見て軽く頷く 「殺人はちっとも特別な事じゃないからだよ」 それは、どういう、 意味? 「同族殺しや、弱者をイジメ殺す事、果ては退屈しのぎの殺戮なんて動物の世界でも当たり前にあるんだよ。弱い者は切り捨てられるし、子殺しや子育て放棄も日常茶飯事だ」 だって 先生は…… 人間だ けだって  言って た 「違うね。もちろん、人間以外の動物にも死を悼む心を持ったモノもいる。ゾウもイルカも、サルや犬、ライオンなんかでも聞くよね」 そ  う。動物 は優し い 「でも、そこから反省し、他者にも同情する心を持つ事が出来るのは人間だけなんだよ」 つまり 「殺すのは誰でも出来る。現に私も沢山殺してるしね。だけど、殺さないのは特別な人間にしか出来ない素晴らしい事なんだよ」 なんだ  よ。俺 は特 別な事を し  たつも りが 当た り前 の事   しかし て  な かったって事    なの か。 早 く教え てくれ れば 良かっ─── 「おやすみ」 目を閉じればひたすら闇があった
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