小さな鍵

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「ちょ、なんで俺が取ったのに。先輩の業績になってんスか?」 「彼と二人で取ってきたんだろう?なら君でなく、彼が居たからこそだ」 「違いますよ!その日先輩は、俺に任せてどっか行ってましたよ!」 「彼がそんな事する筈無いだろう、なんだ?そこまでして成績が欲しいのか?ハングリーなのは良いけど、嘘はいけないよ。嘘は」  納得、行かなかった。  正直、今でも納得は出来ない。  上司にゴマを擦るのと、猫を被るのばかり上手い先輩も。それをさっぱり見抜けない上司も、気に入らなかった。  だから連中をぶん殴って、会社を辞めさせられた。  問題にこそされなかったのは、会社の名前に傷が付くからだろう。  そういう、古くさい体質の会社だった。俺が憧れてた都会ってヤツは、そんなもんだった。  それは夜の世界に入っても、しきたりやらで大して変わらなかったが。こちらの方が実力を評価されるから、耐えられた。  だが、のしあがってみたところで。手に入ったのはマンションの最上階からの景色なんてちっぽけなものだけ。  今は全部が虚しかった。  俺は気付くと、スーツケースに手を伸ばしていた。見てくれは古いが、随分と頑丈な作りで長持ちしそうだ。  開けようとしたが、鍵が掛かっていて開かない。  結局、無駄じゃねぇかよ。  だが、不思議と俺は諦めずに。家の何処かにある工具箱を探していた。  三時間も掛けて、ようやく物置部屋から発掘した工具場で。俺は鍵をスーツケースから無理矢理外す。  何が俺をそこまで駆り立てたのかは分からないが、何故かそうしなくちゃならない気がしたんだ。  そして、俺はようやくスーツケースの鍵を壊して。服の袖で額の汗を拭った。  ようやく中身とご対面だ。
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