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彼女は首にしがみついたまま僕に言った。
「ごっ、ごめんなさい少しこのままで、私、大きな音嫌いなの…」
そう言う彼女の本当の理由は僕は後に知る事になるが、この時の僕にはそれが可愛いく思え、営業でも良いやと思い「良いよ、大丈夫少しこのままでいようね」と我ながら臭いセリフを吐いていたが、頭の中では決まった…そう思っていた。
しばらくしても音が鳴り止まないのでさなが言った。
「みさき、窓の外観て来てくれない…?」
不安そうな彼女の言葉を取り除いてあげたくて、「良いよ」僕はホテルの雨戸を開けた。
ヒュードーン、パラパラ
花火だった。
「さな、観てご覧よ花火だよ、花火」
「嘘、だって今10月だよ…」
彼女を呼び寄せ、窓際に立たせ僕は彼女の後ろから彼女を抱きしめた…
「綺麗…でも儚いね…」彼女が呟いた、僕も同じ事を思っていた。
「みさき、今年花火観た?」
「いや、仕事忙しくて今年どころか、数年観てないかも」
「嘘~だ彼女とかと観てるでしょ、気使わなくて良いよ~」
僕は慌てて「いや、本当だって、俺彼女いないもん…もてないし…」本心だった、でも彼女は笑って「はいはい、風俗で遊ぶ人って大体そう言うもんね~」と僕は慌てて、「そう言うさなだって、本当の所は彼氏居るんじゃないの?」彼女の左薬指を見たとき、指輪はしてなかった、人妻では無いと僕はちゃっかり確認していた
「さあどうだろう?」
話をはぐらかす様に、さなが僕にキスをした…
花火が終わって少したった時だった
「ピーピーピーピー」僕の携帯が鳴った…
僕は慌て電話に出た、「はい、相葉です。」
「相葉ちゃんお疲れー」上司だった。
「相葉ちゃんごめんねー、俺余計な事を…」申し訳なさそうな上司に「あっ、いえ大丈夫です、所長又明日ゆっくり話しませんか?」
早く電話を切ってさなとの時間を楽しみたかった。
「うん、ごめんね相葉ちゃん、まあ今日やけ酒しても明日だけは大目に見るから、じゃあ又明日」
「はい、お疲れ様っす又明日」
「何かかっこいいね、みさき」
後ろを振り返るとさなが僕に微笑みながら言った。
「上司から、今日俺上司の代わりにちょっと用事してたから」
嘘を付いた、でも彼女は「忙しいんだね」と笑顔で言った。
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