何でこうなった……

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 汗と荒い息遣いが訓練場に充満する。  一日休みを貰った私達は、今、戦う為の訓練を、アレサレサ王国騎士団長、カザール・レイニアルに受けていた。 「休むな! 次は訓練場を三十周!!」  短く整えられた銀髪を、汗で濡らしながら、凡そ三十代の見た目なおじ様のハスキーボイスに、生徒一同、疲れた表情で愚痴を零していた。 「んでこんな面倒な事しなくちゃいけねぇんだよ……」 「しっ! 聞かれたらまた何周させられるかわかんねぇぞ」  男子の愚痴に、女子も同意する様に愚痴を零す姿が窺えた。皆イヤイヤ走るが、ワレラが騎士団長様は、その姿に満足そうに頷いていた。  私の方では、桜と並びながら走っていたりする。 「桜、私、この訓練が終わったら、結婚するんだ」 「えっ!? そんな、嘘ですよね! 先生」 「うん、嘘だ」  ジョギングぐらいのペースで走りながら、お馬鹿なやり取りをする私と桜、勿論、小声で喋っているから、あのクソ面倒な騎士団長様には気付かれていない。  と言うか、何で走らなくちゃいけないんだ。確かに、基礎体力をつける事は大事な事だ。だがな、だからと言って、二十代後半の私も走らせなくてもいいだろ?  幸い、この世界でのステータスが良かったのか、あまり疲れないが、もし、もしもだ。  地球の頃と同じ体力だったら、私は三十周どころか、五周出来たかもわからんぞ。  やれやれと頭を振っていると、隣で走る桜が小声で。 「先生、何かあの騎士団長がこっち見てます」  うぇ!? マジか。  そろ~と首を動かして見てみると、確かに、騎士団長様がこちらに注意深く見ていた。  何なんだ? 一応、私達は真面目に見える程度にはやっている筈なんだが、と、心の中で首を傾げていると、騎士団長様と目が合う。  ポッ! と顔を赤くさせて素早い動きで首を横に振る騎士団長様。  へ?  イヤ待て、待て待て。  まさか、だよな……?  まさか、あの見た目ダンディなおじ様が、こんな駄目女の顔を見て顔を赤くした訳じゃないよな? 私の横にいるピッチピチの女子高生の桜を見て顔を赤くしたんだよな。  そうだと言ってくれ……。
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