何でこうなった……

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「先生の顔を見てあの騎士団長、顔を赤くしましたよ。おっさんの癖に私の先生に惚れる何て、万死に値します」  私怒りましたと、プンスカ怒る桜、まず言っとくが、私はお前の物になった事はないし、あの騎士団長様に惚れられたとか言うな。まだ望みは捨ててないのだから。  気持ちが沈んでいくが、そこは気力でカバーし、私と桜は何だかんだで三十周を終えると、ロングソードを杖の様に立てている騎士団長様が、訓練場に響き渡る程の大きな声で説明をし始める。 「全員聞け! 今から、自分にあった武器で訓練をする。まずは自分が使えると思った物を、あそこにいる兵士に言って借りて来い! 借りたら少しの間、自分で考えて使ってみろ。分からなければ、俺かそこらにいる兵士に聞け! いいな」  騎士団長様の説明に、疲れ果てていた男子共が、一気に元気になり、我先にと武器を取りに行った。  全く、元気である。  若干疲れた足に、軽く手で揉んだ後、私も武器を見る為に向かおうとした時、後ろから声を掛けられる。 「あぁちょっと待ってくれないか? クロダ殿」 「えっと、何でしょうか?」  話掛けて来たのは、騎士団長様だった。彼は短い銀髪を指で弄りながら話す。 「その、だな。クロダ殿はどんな武器を使いたいんだ?」  おおっと、私の願いは空しく、騎士団長様にアプローチを掛けれる。私の後ろで歯をギリギリと音を鳴らす桜に、私は騎士団長様に見えない様に左手で押さえ、平静な顔で答える。 「そうですねぇ、刀と言われる物が在ったら、二つ程欲しいですね。私のスキルは二刀流なので」 「ほう、刀か、それは珍しい。あれは東方でしか見られない物だ。あ、だが大丈夫だ。俺が用意してこよう、少しの間待っていてくれ」  騎士団長様はそう言うと、脱兎の如く走り去り、残った私はめんどくせぇ……と小さくごちる。  後ろで押さえていた桜はチッ! と舌打ちを鳴らしたような気がするが、気にしない。  私は騎士団長様が来るまで、他の生徒達がどういう武器を選んでいるかを見る。  剣や弓、槍もあるのか、様々な武器を手にして、男子ははしゃぎ、女子は少し不安げである。幾らあのイケメン王子様の為、と思っても、恐いものは恐い、これは仕方ない事だ。
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