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少し前まで比較的平和な世の中で生活していた私達だ。いきなり戦え、何て言われても、はいそうですか、てなる訳がない。
本当なら、教師である私が、生徒を守る為に動かなければならない事態であるが。
だが、そう言う訳にもいかない。
相手は一国の王が相手だ。私が泣こうが喚こうが、最終的には戦わされるだろう。それに、下手に逆らうよりも、従順に従った方がいい。
もし、逆らって、邪魔だと判断されたら、下手をしたら死刑、良くて奴隷、そういう事だってあり得ると言う話だ。この世界は、前の世界よりも厳しい環境なのだから。
一人思案していると、慌てた様に走り去った騎士団長様が戻って来ていた。
「クロダ殿! 持ってきたぞ。これがその刀と言われている物だ」
騎士団長様に手渡されたのは、二本の刀、一本は黒く、もう一本は水色、刀の長さは少し刀身が長く、リーチがある。強度が怪しいが、まぁ文句は言えないしな。
「どうも、騎士団長自ら持って来て頂いてありがとうございます」
「イヤイヤ礼には及ばんさ。その二つは貰ってくれて構わない。どうせこの国で使える者などいないからな」
ほぉ、それは嬉しいな。私はもう一度礼を言うと、騎士団長様は頬を赤くさせて笑うと、生徒達の方へと歩いて行った。
私はそれを見送り、自分のスキル、二刀流がどういう働きをするか、実験を開始する。
まず、腰に差した二刀を、抜く。
スー―と抜かれた二本の刀は、どちらも透き通った刀身で、見ているだけで、心を奪われそうだ。それほどまでに美しい。
二つの刀を持ってみたが、それほど重く感じない。どちらも羽の様に軽い、これは二刀流のスキルの効果なのか、ブンブンと適当に振るい、手に馴染ませる。
忘れもしない、中高生の時に、中二病を患った私は、二刀流に憧れていた時代があった。
だから、だろうか。
このスキル、二刀流があるのは。
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