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城では今、大騒ぎになっていた。
黒田 祥子と西条 桜が城からいなくなっているからだである。
二人の失踪を知ったのは、朝食の知らせをする執事からだ。朝、いつも通りに呼びに来た執事は、ノックして黒田を呼んだが、一向に返事がない事で怪訝に思い、失礼と、断りの言葉をいれて入って見れば、部屋の中には誰もいなかった。
そして、今現在進行形で、城の中で二人の行方を探しているが、もうこの城にはいないだろう。
今も兵士や生徒が探しているが、無意味な事だ。
王は玉座で頭を悩ましていた。黒田がいなくなった事に少し後悔していたのだ。
黒田は、王子と王女のスキル、『チャーム』が効いていない、例外の一人でもあった。
他にも、桜、春山、この三人は王子と王女の『チャーム』の効果が、全くと言っても過言ではない程、効いていなかった。
「あの二人がいなくなったのは我が国にとって、大きな損害かも知れぬのう」
「そうかも知れませんね。ですが、例えこの国にいても、扱いきれるかと問われれば、私は否と答えるでしょう」
王が呟く様に言った言葉に返したのは、隣に立つ王子であった。王子の言葉に王は「そうかも知れぬな」と、小さく答える。
「ですが、あの二人がいなくても、私達には他にも大勢の勇者様がいます……“予想外”でしたけどね」
「ふむ、確かにそうだ。元々の計画では、勇者は“たった一人”の予定であったしの。まぁ結果良ければ全てよい」
不適に微笑む王と、笑みを張り付かせた王子の二人は、さすが親子といった感じで、どちらも黒い笑みであった。
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