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私は市原さんの唇にそっと自分を重ねた。
震えているのは…
…私だけじゃない。
「…ずっと…ずっと…そばにいて…」
私を抱きしめた市原さんは
もう一度私にキスをした。
唇を離した市原さんが空を見上げる。
「見ろよ稲森…」
私は彼の腕の中で市原さんと同じ方を見つめる。
「美澄…今夜は月が…綺麗だな」
私は何度も頷いた。
零れ落ちる涙は
きっと月色(ツキイロ)。
涙に滲んで形を崩した白い月は
市原さんの優しさ
そのものだった―――――
Fin
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