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私は今日
乗り越えなければならない。
「市原さん…」
声が震えた。
「声…」
「声?」
「うん。お母さんから聞いたの。…亡くなった人の…声…」
「ああ…」
私はカラカラの喉で唾を飲み込み、そして言った。
「…お兄さんの声…聞こえたんですか?」
彼からの返事を静かに待った。
「聞こえた…」
「…なんて…?」
「…誰も悪くない…。親父と…お袋を…頼むって」
市原さんは黒い海の幾重も重なる波を見ていた。
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