01.プロローグ

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「俺たちも出よう」  俺はアヤの肩を叩いた。 「うぅ……戦闘って苦手なのよねえ……」 「何ごとも経験ですよ、お嬢さん」  文句をぶーたれるアヤを左の小脇に抱え込んで、俺もウィルの後を追った。  扉の無くなった入口から表に出た瞬間、 『『グァアアッ!!』』  巨大な拳が左右から降り注いだ。 「おぉ――ととッ!?」  身をかがめて二本の腕をかいくぐり、俺は右手を一匹のオーガに向けた。  ――タタンッ! 『ガァァッ!?』  コインが二発命中、打たれたオーガがよろめいて下がる。  しかし、もう一匹のオーガが既に二撃目の豪腕ストレートを振りかぶっていた。 「ちょ――ッ」  右腕に魔力を行き渡らせて防御の姿勢を作ってみるも、一抱えはあろうかという剛拳を受けきる自信はない。  迫り来るオーガの拳に背筋が凍る。  コレやべぇ――  負傷の覚悟を決めた俺の前に、サッと人影が走った。 「おおぉッ――!」  白いワイシャツにダメージジーンズ、腰にぶら下げたレザーの工具バッグ、羽付き帽子を被った華奢な男の背中、獣じみた雄叫び―― 「ぁああああッ!」  馬鹿にデカい片刃の斧が、豪快なフルスイングでオーガの胴を薙ぐ。  ――ザァンッ! 『……!!』  胴から斬り離されたオーガの上体が言葉もなく宙を舞った。 「うかつだお」  酷く間延びした緊迫感のない声だった。  大斧を軽々と肩に担ぐ細身細面の青年。  羽付き帽子の下は人気俳優か深窓の貴公子か、目を見張るほどの美顔をしていて、眠たげな二重瞼にシルバーグレーの瞳が納まっている。  先ほどオーガの足を絡めとった光の鎖の技を使った張本人だ。 「ビート、助かった」  店の外に集まったオーガそれぞれにコインを撃ち込みながら、背中越しに礼を言う。 「いつもの所に居てくれてこっちこそ助かった。どっかの馬鹿を追うのに困らなかったから」 「馬鹿って誰のことかしら……」  小脇に抱えたアヤが他人ごとのように呟いた。 「おめえだお」  間延びした声に怒気が混じる。  ラフな格好でマサカリ担いだこの美青年、名をビート・スウェインと言い、表情薄く声にも口調にもあまり抑揚がない。鍛冶職人を多く輩出する地方の出で、語尾が時折「お」に訛る。
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