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「あっちこっちふらふらしやがって。取って食われるまえに孕ませるんだお」
「恐ろしいセクハラをサァッと口にすゥな! こんの宿六狼!!」
ラ行を所々滑らせながらアヤが喚いた通り、この鍛冶職人の性情は極めて狼に近い。
「リディアの少子化問題に、終止符をうつんだお!」
抑揚のない声で言うこういったセリフも、ジョークではなく案外本気の時があるから恐い。
「はっははは! あっはははは! 剣抜く気にもならねえぜッ!」
ロマン・アンド・スリルにジャンキーなウィルは、馬鹿笑いしながらオーガと素手で渡り合っていた。
幾重にも折り重なる剛拳をひらりひらりと俊敏に避けながら、渾身の突き蹴りで猫が巨体を圧倒する。
俺は咥え煙草の口元を緩め、右手でコイントスをした。
幼き頃から信じてやまぬ、慈悲と怒りの我が女神――
俺は破戒の限りを尽くし、冒険者として今ここにある。
貴女は俺を怒るだろうか?
貴女は俺に微笑むだろうか?
裏か表かイエスかノーか、
答えは出ない――
「銀の弾丸(シルバーブリット)!」
俺は捕まえたコインの裏表を、確かめることなく撃ち込んだ。
これが俺の所属する商会、「ラブリッサ」の冒険者達である。
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