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序文
人・魔・精霊、数多の命を内包する生命の揺りかご、カナンテルス大陸――
有史以来、大陸には争いが絶えなかった。
人同士が争って血を流し、人の血に酔って猛る魔物、人魔に聖地を侵されて荒れ狂う精霊、混沌とした暗黒時代が続いていた。
「銀の都」と誉れ高いリディアの国の王は、霊峰から絶えず産出される銀の力で人魔の争いを征し、国教である聖ライアリス教の導きによって精霊を鎮め、大陸統一の偉業を成し遂げた。
リディア王の大陸統一からおよそ五十年、戦乱の傷跡から立ち直ろうとする人の世は活気に満ち溢れている。
だが、強力な魔物の猛威や狂った精霊の被害が完全に無くなったわけではない。
小規模ながら戦禍の火種は各地にくすぶり続け、王権が磐石とは言い難い。
なによりも人々が頭を悩ませたのは、大陸中に溢れかえった難民問題だった。
戦乱によって国が滅び、土地を追われて帰る場所を失った人々らが、大陸の主要都市になだれ込んで治安低下と情勢悪化を引き起こした。
世の人々は、その日の暮らしを得るためにどんなことにでも手を染める難民らを「浮浪者」「厄介者」と忌み嫌い、時に侮蔑の意味を込め、時に畏敬の念を込め、
――冒険者
そう呼んでいた。
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