偉大なる考古学者の死

3/17
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「お待ちしていました。瀧島さん。私は瀧島教授の弟子のナタリア・ヒューツバックです」 葬儀の後、スーツもそのままに瀧島が向かったのは羽田空港だった。 そこで瀧島を待っていたのは多数の黒服を着た強面のボディーガード達と、長く豊富で艶やかな黒髪と緑の瞳を持った女だった。ナタリアと名乗った女は瀧島の父と同じ考古学者であり、彼の一番弟子だったという。 「瀧島だ。父が世話になっていたそうだな」 「いいえ!世話だなんてそんな!あの方は本当に素晴らしい方でした。今回のことは本当に残念としか申し上げようがありません。瀧島教授はいつも堅実で知識深く、私達学生は多くのことを教わりました」 瀧島は先ほど北野に考古学者としての父しか知らないとは言ったが、ここまであの男への評価は違うのかと思った。瀧島自身は考古学者として名を挙げた父親のことを家庭のことを顧みないロクデナシと評したが、恐らく彼の妻よりも一番近くに居たであろうこのナタリアは父親のことを素晴らしいと、考古学者としての鑑だと褒めちぎる。 「それで、この手紙に書かれていたことだが」 「そのことは機内でお話しします。今は時間がありません。急いで現地へ向かわなければ」 半ばナタリアに引きずられるようにして瀧島と周りにいたボディーカードたちも国際線ゲートをくぐっていった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!