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夢の中では、いつも同じ光景が繰り返された。
まるで御伽噺にでも出て来そうな高くそびえる城の塔の中で、月光に照らされる少女の姿。
顔はよく見えないけれど、その長く艶やかな髪が淡い光を受けて輝くのが分かる。
そして、まるで月に向かって乾杯をするように手に持ったグラスを高く掲げる。
何故かグラスの中身が毒だと分かっていて、必死で止めようとするのに声が出ない。
少女の唇がグラスに付けられる。
(駄目だ、飲むな!それを飲んだら全てが……)
全てが終わってしまう。
叫ぼうとするのに、どうしても言葉にならない。
けれど、少女がふと手を止めてこちらを見た。
前髪が微かに揺れ、白くきめ細かな肌が見えた。
それから顔立ちが、眼差しが。
大きな瞳が一瞬、自分を映した気がする。
夢はいつも此処で唐突に終わった。
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