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鳴り止まない笑い声に、苛立ちを覚え始めた頃、ようやく笑い声が止む。
すると、突然目の前で爆発が起こる。
正確には、何も爆発しておらず、ただ光の塊が一気に目の前で開いた。
思わず目を閉じた。
恐る恐る目を開けると、また真っ白な世界に変わっていた。
ただ、一つだけさっきと違うことがある。
目の前に、手のひらほどの大きさの真っ黒な何かが浮いている。
それは、浮いているというより、真っ黒な空洞が目の前に出来たようだ。
そこをじっと見つめると、それはみるみるうちに形を変えていく。
伸びたり、縮んだり。
粘土細工の工程を見ているようだった。
そして、それは一つの形になる。
蝶だ。
漆黒の蝶。
だが、不思議なことに羽ばたくわけではい。
ぽかんと口が開いたまま、ただその蝶をみる。
すぐに、あの声が聞こえてくる。
ただし、今度は明らかにその漆黒の蝶から。
「へぇー。蝶の形になるのは初めてだ。まぁいい。下等な生き物の考えそうなことだ。ことに、女という生き物は美しい物に固執する。典型的だ」
そう言ってまた蝶がクスクス笑い出す。
「あの…蝶々さん。私、死んだんでしょ?それともまだ生きているということ?」
それまでクスクス笑っていた蝶から笑い声が止む。
「生きることを捨てたのは、お前だ。だか、それは、死ではない」
この、回りくどい言い回し。
私を少し苛立たせる。
確かに私は、私が死んだことを自覚した。
だが、死んでなお、死ぬことを許されない。
死んでいないとして、だがここは決して現実の世界ではない。
では、ここは一体なに?
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